映画を見たり


 『チャーリーとチョコレート工場』にはティム・バートンの方法が幸福なかたちで完成されていると思う。近作『PLANET OF THE APES 猿の惑星』でマーク・ウォルバーグが戻ったもとの世界が想定外に滅茶苦茶であったり、『ビッグ・フィッシュ』でユアン・マクレガー異世界の住人たちに苦渋の別れをしなければならなかったりとあったのに対して、こちらは仲良く結ばれている。俯瞰ショットと地上の平凡なショットで断絶されていたチャーリーとチョコレート工場が、最終的に一続きになった。チャーリー一家は工場に包まれ、ウォーリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)はチャーリー一家に包まれる。この幸福の完成には、バートンがヘレナ・ボナム=カーターと結婚したことと無縁でないように思う。

 寝てないのに無理して見たせいか『月世界の女』はずいぶん寝た。168分の半分も起きてなく、終映3秒前までも寝ていたのに、本作への賞賛の気持ちが収まらない。そこで「真の映画とは見ていない映画のこと」(違ったか?)というゴダールの言葉があったように思い出す。となりのだんごは旨そうにみえると簡単に片づけられるか。 それとは別に、たまに目を覚ますと目の前ではさっきまで見ていたのとさほど変わりのない光景が、人物がちょこまか動いて人にあれこれしゃべっている、という馬鹿みたいな単純さが向こうにあり、こちらにはそれをじっと見つめるわたしたちがいる、という通常の時間や場所の感覚を無視した異常な関係に感激したんだと思う。

 ズビグ・リプチンスキーのヴィデオ作品群。『ニュー・ブック』や『タンゴ』のなみなみならぬ野心にはびっくりした。