あの写真は

 批評会では先輩に質問攻めにされて理性を失ってしまったけれど、自分があの二枚でやろうとしたことを思い出した。要は、写真で人と写真の関わりを表したかったのだった。写真で写真を説明するというメディアの回帰。人がシャッターを押すのは対象が自分にとって固有性を帯びた心象風景だからだろうと常日頃自分は思っていて、そんな状況を写真で説明してみようと。さらに、鑑賞者に訴える写真というのはその写真が鑑賞者にとっても固有性を帯びた心象風景めいているからだろうと。映画の切り返しの要領で一枚目の男に感情移入し、二枚目を眺め、「製作者(自分)―被写体の男―鑑賞者」という3固体にまたがる強烈なイメージとして二枚目がたち現れる、みたいな。二枚の作品の間では次元が違うわけだから、色合いの違いもさして気に留めていなかった。
 というつもりだった。今となっては別の道を探るということで。