ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!

 素晴らしい。監督のアレクサンダー・ペインは映画をよく知っている人に違いなく、象徴的な記号が随所に配置されている。曲線のイメージ(高校教師ふんするマシュー・ブロデリック)と直線のイメージ(優等生女子高生リース・ウィザースプーン)の対立、等。映画は理路整然とした筋を持つ必要などなく、たんに相貌とスクリーンの枠を往き交う男女がいればそれで成立するのだということを久しぶりに実感させてくれた。例えば生徒会長演説の席、画面奥のクリス・クラインの貧乏ゆすりの慎ましく下品なアクション! ブレデリックの顔をぶざまにする蜂の襲撃には何の必然性もないが、既に人物と環境は調和して一つの「風景」が生成され続けているので、何が起きても構いやしない。ブロデリック、ウィザースプーン、クリス・クライン、ジェシカ・キャンベルらの顔は、このままいつまでも眺めていたい、と思わせるそれだった。アカデミー賞など狙う気はさらさらなかったろう役者たちのうつろな眼に時おり宿る一回きりの狂おしさとかエロっぽさとか、いとおしかった。『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』107分の映像は、一つの風景。

ハイスクール白書?優等生ギャルに気をつけろ!? [DVD]

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