シネフィルって

 100本見て1本あるかないかの、極私的な個人史に侵食する作品に出会うために日々映画を見る。映画館ではよく眠る。心地良いが故。眠れる映画が個人史に収まる。たとえば、『イン・ザ・ベッドルーム』、『天国の口、終りの楽園。』、『惑星ソラリス』、『ヴェルクマイスター・ハーモニー』、『sweet sixteen』、『フォーエヴァー・モーツァルト』、『ヴィレッジ』、『珈琲時光』・・・と最近の思いつく限りを。眠ろうが起きて全篇見ようが、つまらないのは二度と再会することがないだろうし、惹かれるものは寝てしまってもいずれ全篇見る。 ビデオやDVDで見ることのつまらなさは、「眠られない」ことにある。停止やら巻き戻しやらがあり、映画の幻影と音に積極的な中断ができてしまうから。睡魔に襲われたとき、眠らんとする職業癖みたいなものは、いささかも高貴でない。映画館では良く眠れ。