カリフォルニア・ドールズ

Metro-Goldwyn-Mayer

 本作を製作したのが、50年代にアーサー・フリードの貢献によりミュージカルの隆盛を極めたMGM(今はソニーの傘下)だというのは象徴的だ。ミュージカルにはその観客を、映画内で舞台らを見る観客に感情移入させるという効果がある。女子プロを描く本作では、会場で観戦し声援を送る客たちはもちろんのこと、もっと直截に作品のself-reflexiveさを高めているのが、テレビ中継を眺めている試合を次に控えた選手とそのコーチの存在なのだ。そこではテレビに向かう二人が斜め前にいる。カメラが二人の背後に回りこめばそこにはいま我々が見ている映画作品とまったく同じふうに撮られた試合が映っているに違いない。ただしそんな回り込みは必要ないのであって、仮に奥にテレビ、二人の背中、といった構図があったなら、作品を見ている者は己を相対化して冷めてしまうだろう。日常でそうであるように、気持ちを伝え合う時は向き合わないといけない。
 ミュージカルは映画の理想形態だとゴダールは述べたけれども、本作はミュージカルの教えを汲んだ映画の中の映画。傑作!!

 リングの四角は映画の枠と相性がいい。もっと相性がいいだろうスポーツはテニスだろうということで、もうすぐ公開の『ウィンブルドン』という映画を見てみたいのだが(キルスティン・ダンストも出てるし)、練馬でしかやらないのだ(!)。