くちびる

 ナオミ・ワッツという女優は、その唇にいくつもの表情を持っている。ふつう注視される眼からほんの少し下で、外壁を突き破って感情の表出が細やかに展開している。振り返ってみればワッツの唇は、『マルホランド・ドライブ』(デヴィッド・リンチ,2001)では嫉妬に震えていたし、臆病に縮んでいた。『21グラム』(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ,2003)では憔悴に凝固していた。本作『ザ・リング2』で問題のビデオテープを見た者の恐怖でひん曲がった唇はだから、彼女演じるレイチェルの怖れの対象であると同時に、女優ワッツの怖れの対象でもある。唇は、大事にしないといけない。頬の筋肉も、40代になっても衰えないよう、日々鍛えてください。