せんだいメディアテークと蓮實重彦

 生協で一冊購入

 せんだいメディアテークと蓮實。思い出深い組み合わせだ。初めて彼に会ったのが、浪人とのときあそこで行われたマクシム・デュ・カンに関する講演だった。
 同じ場所で行われた映画講義を活字にまとめたのが本書。第1章を読んだ。モーパッサンの『脂肪の塊』の日本、旧ソ連アメリカ、フランス、中国での映画化作品を比較、検証している。

20世紀の面白さは、モルフォロジーとテマティスムの一貫性が、ちょっとした細部の代置や置換によって、いきなり表情を変えてしまうことにあります。構造は同じでありながら、まるで異なる力をあたりに波及させるのです。それは、模倣が差異を生産するといってもよいでしょう。(p.55-56)

 歴史的な必然を否定するのではなく、正視しなければならない過酷な宿命として受け入れる、というのはやはり蓮實流。21世紀になってもひとは19世紀の小説とか19世紀の音楽が好きだけれども、20世紀的なものに目を向けることは「知」抜きにして必要だなと思った。彼の言葉を借りれば、生の倫理として。