『「ブレードランナー」論序説』

移民のための移民による安価な娯楽がやがてアメリカ大衆文化の代弁者となり、さらに世界市場を席巻した歴史を考え合わせると、ハリウッド映画は故郷や民族や宗教あるいは父親といった自己同一性のよりどころを失った男たちによる、そうした人間たちのための無意識的ノスタルジーということになるだろう(p.29)

 4分の1くらい読んだ。ウィリアム・フォックス(20世紀フォックス)、アドルフ・ズーカー(パラマウント)、ルイス・B・メイヤー(MGM)、ワーナー四兄弟(ワーナー・ブラザーズ)カール・レムリ(ユニバーサル)ら各会社の設立者は皆ユダヤ人。ここまでは周知だけれども、上記のような構図が『ブレードランナー』にも当てはまるということらしい。亡命ユダヤ人の人生はフィルム・ノワールそのもので、それが1980年代の作品にまで及んでいるならば、ユダヤ人を迫害したロシアのアレクサンドル三世はとんでもない影響を及ぼしたということになるな。迫害しなかった場合映画がどうなったかを想像することはできないが。