どんだけ静かなの

 水曜日は授業とか放課後とかいっぱいでなんにもネタがないのでこの前読み終わった『マイケル・K』からの引用。

ダイニングルームのまんなかに立って、息を止め、あたりのどんな微かな気配も聞き逃すまいと耳をそばだててみたが、かりに孫息子が生きていたとして、その孫息子の心臓の音が聞こえたとしても、彼自身の鼓動とぴったり同じ拍動を打っていた。
(J.M.クッツェー,『マイケル・K』,筑摩書房,p.126)

He stood in the middle of the dining-room and held his breath, listening for the faintest stirring from above or below; but the very heart of the grandson, if there were a grandson and he were alive, beat in time with his own.
(J.M.Coetzee, Life & Times Of Michael K, vintage, p98)

「どんだけ静かなんだ!!」というつっこみが期待できる。マイケルには孫なんていないのにいちいちその存在を仮定しているところが不器用で、心臓の鼓動が聞こえ得るという状況が切迫しているマイケルに合っている。まあ不器用で回りくどい印象はあるんだけど、たぶん作者もそれが狙いなわけで、総じて巧い。こうやっても静けさを表現できる。

id:vigo:20050301#p3 『エリザベス・コステロ
id:vigo:20050224#p1 "Youth"
id:vigo:20041108#p2 『マイケル・K』
id:vigo:20041110#p2 『マイケル・K』(引用)
id:vigo:20050116#p1 『敵あるいはフォー』
id:vigo:20050112#p1 『ロビンソン・クルーソー』(デ・フォー)
id:vigo:20041231#p3 『石の女』
id:vigo:20041225#p3 『ダスクランド』