Ensaio sobre a Cegueira

国中の人間が失明する。ただし視界(?)は黒でなく真っ白になる。
 台詞にはカッコがつかないし、段落も変わらない。時に語り手の考察が入り、白の闇に囚われた人間の迷いに似ていそうな文章が延々と続く。それが至る結論はいたって平凡だが、自分がそうであるように、人間平凡なことが本当に分かるためには紆余曲折を経ないといけない。

われわれが生きてゆくことになったこの地獄で、さらに、われわれが地獄のなかの地獄に変えたこの地獄で、もしまだ恥という言葉が生きているならば、それは勇気を持って塒のハイエナを殺したその人のおかげだからですよ。それはそうだが、恥で腹をふくらすわけにはいかないよ。あなたがどういうお方か知らないが、たしかにおっしゃるとおりでしょう。恥を知らないせいで腹をくちくしている人間は、かならずいるものです。しかし、われわれは、自分たちには値しない、ぼろぼろになった最後の尊厳以外に持てるものは何もないのです。だからせめて、当然あるべき権利を求めて闘う能力がまだあることを示そうではありませんか。(p.212-213)

白の闇

白の闇